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「希衣子」

寒い寒い!
彼岸の中日だというのに箱根辺りは大雪で、事故や停滞が起きているという・・・。
こちらも寒い、今日はストーブがフル回転だった。
この寒さで、早く咲きそうだった桜が少し長持ちしてくれたらいいのに・・と思っている。

題名から現代ものかと思って敬遠してきたのだけど、図書館にある諸田玲子の作品をほとんど読んだので、そろそろ最後かなと思って「希以子」を読んでみた。
明治末期に生まれ大正・昭和と苦労しながら生き抜いた女性の話である。
この時代は皆がいろんな意味で大変な思いをしている。
時代の大きな変化があり、なにより戦争というどうにもならないうねりに巻き込まれていくのだから・・・。
それでも幸せで物足りている人は小説の題材にはならない。
希依子も例外ではない。
豊かではない家庭で育ち、両親の離婚・再婚・可愛がってくれた里親・そしてその娘との長い間に渡る確執などを織り交ぜて、幼いころから五十過ぎまでを描いている。
裏切られても騙されても人を恨み切れない人の好い希以子は、損なようなその気性で結局は波乱万丈の生涯を生き抜くことができたのではないだろうか。
好きだった初恋の人との別れ、次々と知りあう男たちには苦労させられ、商売の才覚で金を儲けるがそれらを全て失って夜逃げもする。
戦火の中国に渡りそこで終戦を迎えるのだが、それまで日本軍に押さえつけられていた中国人に切りつけられ瀕死の重傷を負う。
だが強運で日本に帰ることができ、我が子とも再会し人生をやり直していく。
苦しくても子供を産んでいてよかった・・・。
子供のため・・と思えば生きる力がわき、何としても頑張ろうとなるのが母親だ。

晩年になってやっと生活が安定したころ、希以子を憎み騙し続けてきた養母の娘美佐緒が全てを失って転がり込んできても、希以子は受け止めるのだ。
何となく美佐緒は登場した時から、偉そうな態度で希衣子と敵対しつつも最後は希衣子のお荷物になるような気がしていた。
希衣子の人の良さ、男運の悪さなどが全編を貫いていて少しイライラするが、小説とはいえ終わりよければ・・・だ。
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お順・勝海舟の妹と5人の男 下編

勝麟太郎に魅了された本だった。
これまでどちらかというと、幕末の出来事では改革派の薩摩・長州・土佐の浪士たちの逸話が多く取り上げられてきたように思う。
彼らは個々に時代を見据え、命を落とすことを恐れず改革に突き進んでいった。
それに比べ守りを強いられた幕閣は悲壮感が漂う。
それはそうだ、会津藩・新撰組などの悲劇、倒幕により主君を失った多くの武士たちの辛苦ははかりしれない。
そんな中にあって幕臣でありながら改革派の浪士たちと交流し、同じように新しい時代を夢見ながら常に心は徳川家の安寧にあった、勝麟太郎の揺るぎない気持ちに心を打たれた。
私には勝麟太郎、いや勝海舟といえば江戸城の無血開城、咸臨丸などのとぎれとぎれの知識しかなかったが、終生麟太郎の庇護下にあったお順を始め家族たちの心強さはどんなものだっただろう・・・。

兄を慕い心から信頼していながらお順はこう思ったとある。
明朗で多弁で人たらし、怖いもの知らずで傍若無人に見えながら、本当は兄ほど小心で用心深い男はいない・・・。
そしてそんな兄は自分とは正反対だと・・。
お順には兄の我慢強さや小賢しさがじれったい。
そんな兄にはない圧倒的な力と一途なまなざし、無私の心を持った男を求めた。
それが島田虎之助であり、佐久間象山であったと・・・。

虎之助に恋してその恋はかなわなかったが、虎之助を思い続けた順の一生だった。
得るものがあった象山との婚姻はまだしも、虎之助の身代わりのように思い込んだ村上俊五郎とのかりそめの恋・・・。
俊五郎の中に虎之助の姿を求め、並みの女のようにすべてが見えなくなったお順は堕ちた・・・と思った。
順の自信と気位はどこに行ったのか・・・。
思えば幼いころから武士とはいえ極貧の生活だったが、兄妹とも直参の誇りを失わず強く生きて来た人生だった。
例えれば麟太郎は柔、お順は剛の生き方であったかもしれない・・・。
出世の道を閉ざされたまま亡くなった父親小吉に比べれば、窮乏生活の中でも幕臣の誇りと夢を失わず、しかし時節を読み辛抱し己の信じる道を貫き通した麟太郎は、人に好かれるべくして好かれ、日本の重要人物に成るべくして成っていったのだろう・・・。

麟太郎もお順も当時としてはずいぶん長生きしている。
何歳まで生きたかは知らないが、この小説の最後で麟太郎が76歳で登場してくる。
麟太郎より13歳年下が妹お順である。
何歳まで生きたのだろう・・・。
知らないことばかりだったけど勝麟太郎の魅力にどっぷりはまってしまった。
強く見えながらも女のもろさもみせたお順も、こののち平穏な人生を送ったのだろうか。

最後に好きだった文節を書いておこう。
志半ばで死んでゆく者と表舞台に躍り出た者は、同じように国の行く末を憂える男たちだった。
誰もが一本道を全力で駆けているように見えた・・・。

誰もが新しい波に飲み込まれそうな国に不安を持ち、誰もがより良くなるように考えていたのだ。
勝麟太郎の本を読みたくなった・・・。
ああ幕末は本当に面白い!





お順・勝海舟の妹と5人の男 続き

「お順」の下編を借りに行った。
ついでに確認のため、そばにあった「あくじゃれ瓢六」をめくってみた。
出てる出てる、麟太郎も小吉も男谷道場も覚えがあるはずだ。
それに島田虎之助まで出て来るし、麟太郎の妻になる芸者お民も書いてあった。
瓢六ばかりが気になってその時は読み飛ばしていた。
もちろん虎之助が、麟太郎にとって大切な妹の想い人になるとは書かれていない。
お順も登場していない。
だが色々な共通点があり本当に興味深い。
だがだが・・・
瓢六が間借りしていた家が岡野家というのは私の勘違いだった。
勝家は旗本の岡野家、瓢六は同じ旗本でも小出家であった。
どちらも用人や小者をかかえるお屋敷だったが、当主夫妻の出来が悪く常に金欠にあえいでいた。
あまりに似ていてまちがえるよねえ・・・。

それはともあれ虎之助の死によってお順の初恋は悲恋に終わり、母の勧めで虎之助よりまだ年上の佐久間象山と結婚することになる。
象山から望まれ、順も並みの男よりは・・・と彼を選ぶのだ。
象山は松代藩士でありながら私塾を開き多くの弟子を抱えていた。
そんな象山が失脚して国元に蟄居することになる。
初めて江戸を離れるお順が、これからの厳しい生活の覚悟を決めて兄たちと別れを告げて下編に「続く」となる・・・。

お順・勝海舟の妹と5人の男

お順の絶叫が聞こえた・・。
多分多くの読者も、私と同じように絶叫したいのをこらえたのではないだろうか?
5歳の時から一筋に想い続けた人との別れの瞬間だった・・・。

快活明朗、向学心旺盛な勝麟太郎が、迫る幕末の足音を感じながら剣術や蘭学に励んでいた18歳の頃からこの本は始まる。
お順は麟太郎の13歳年下の妹だった。
父親小吉の放蕩ゆえすでに麟太郎が家督をついでいるが、直参とはいえ無役のため勝家の家計は火の車である。
ことあるたびに小吉の実家である男谷(おだに)家に泣きつき、何とかその日をしのぐ暮らしであった。
その男谷家の当主である小吉の兄が亡くなり、一家で弔問に訪れた先でお順は虎之助と出会うのだ。
眼光鋭く仁王のような大男が、裂帛(れっぱく)の気合と共に刀を振り下ろす瞬間をお順は見てしまった・・・とある。
5歳の少女はその堂々たる風格に眼を奪われ、心も奪われたのであった。

男は島田虎之助、剣客で麟太郎を始め多くの剣士が憧れる存在であった。
剣の道に精進し男谷道場で免許皆伝となり、その後多くの門弟を抱える道場主ともなる。
だが武骨で女心などはわかるはずない男であった。
しかも二人が初めて出逢ったとき虎之助はすでに27歳、二人の年の差は22歳である・・・。
虎之助にとってはその時見たお順は気の強い童女にしか過ぎなかったのだろうが、お順はそのとき彼に抗いがたい宿命を感じた・・と作者は書いている。

小吉の出自など勝家の相関関係は非常に興味深いものがあった。
まだ麟太郎と呼ばれた若き日の勝海舟は、自由奔放な父親に辟易しながらも、そんな父の苦悶も悲哀も知っていたので、父を敬う姿勢を変えず、母を気遣い幼い妹二人を可愛がった。
男谷家の庇護を受けながも貧しい小吉一家は、これまた貧乏旗本の岡野家内の借家に住んでいる・・・。
旗本の岡野家?? どこかで聞いたよ・・・。
そうだそうだ、「あくじゃれ瓢六」で瓢六が生きる希望を失って逼塞するのが岡野家だった。
岡野家の当主も奥方もろくでもない人物に描かれていたが、この本でも当主孫一郎の道楽ぶりは相変わらずだ。
窮乏を極める勝家にもただ一人の用人がいて、その名が六兵衛とは作者の何かユーモアを感じてしまった。
瓢六の本名なんだもの・・。
ただこの六兵衛は若くイケメンの瓢六と違ってお年寄りだけどねえ。
そういえば「あくじゃれ瓢六」でも勝麟太郎はカッコよく描かれていたっけ・・。

17歳になったお順が近づく嫁入りの日をウキウキと考えていたある日、虎之助が突然の心臓発作で倒れそのまま亡くなってしまう。
それが冒頭のお順の絶叫になるのだが、5歳のころから恋とも思わずにあこがれ続けた虎之助のあっけない死は、お順に深い悲しみを与えるが母や兄夫婦の計らいもあり、悲嘆にくれるお順の前にはもう新しい男の姿が見えて来る・・・。
諸田玲子著「お順・勝海舟の妹と5人の男」がこの本の題名で、その上編である。
まだ全部読んでないのでわからないが、5人の中に父小吉と兄麟太郎、そしてこの虎之助が入るとしてまだあと二人誰かが登場するのか・・・
どうなるのだろう・・・。
フィクションではないので知る人ぞ知ることなのかもしれない。
お順はどんな人生を送るのだろう・・・。
これを読み終えて早く下編を借りなくては・・・。

あくじゃれ瓢六

「あくじゃれ瓢六」という題名に、勝手に中年のあばた面の目明し?くらいの想像をして、諸田玲子の本をずーっと読んでいるものの敬遠してきた本だった。
新しい本を探していてパラパラとめくったら、瓢六の人物設定が面白そうだったので読んでみることにした。
なにしろ稀代のいい男と書いてあるし、表紙の絵に何とも惹きつけられた・・・。
全5冊なんだけど№をふってあるわけじゃないので、順番に読んだわけではない。
「あくじゃれ瓢六」
「こんちき」
「べっぴん」
「再会」
「破落戸」(ごろつき)
IMG_9199.jpg
最初に読んだのは「こんちき」だったが、作者によると瓢六は博覧強記・舌人・人脈多彩、しかも少々腕も立ち驚くほどの色男・・とあった。
貿易も行なう長崎の大店綺羅屋の息子でありながら、瓢六がなぜ江戸に出て来たのかその理由は全5冊を読んでも不明だった。
無類の人たらしでもあったが、なまじ女にモテるものだから定職にもつかず、博打三昧の小悪党になり果て牢送りとなったが、その余りある才能が北町奉行所与力菅野一之助に認められ、同心篠崎弥左衛門の相棒として様々な事件解決に協力する約束で牢を出されたのだった。
長屋暮らしをしていたものの芸者お袖に惚れこまれ、自他ともに認める夫婦同然の仲だった。

それが「再会」を開いてみると、瓢六は親しかった長屋仲間にも誰にも告げず姿を消し、貧乏旗本の屋敷内に身を潜めていた。
快活でおしゃべりだった瓢六は、すっかり心を閉ざし死んだようにひっそりと生きていたとある。
なぜなぜ?
エーッ、5年前の大火でお袖が行方不明になってしまったんだって・・・。
半狂乱になった瓢六はお袖を探し回ったが未だに見つからないという設定になっている。
小説なのにお袖と夫婦にさせてやればよかったのに・・。
しかも死んだとは書いていないので、最後にはどこかで出会って二人が「再会」するのかと思いながら読み進んだ。
だがこの再会はお袖とではなくて、親友とも呼ぶべき同心弥左衛門との再会だった。
彼もまた瓢六を探していたのだ。
弥左衛門の必死の説得や懐かしい人々との再会、そして突然現れた美しい人奈緒によって再び気力を取り戻していく瓢六・・・。

その奈緒に瓢六はかなわぬ恋をしてしまう。
身分ちがいの許されない恋であったが、最後には二人の想いが結ばれて明るい未来になりそうな終結だった。
ホントは愛すべきお袖姐さんと幸せになって欲しかったけどなあ。
若くて生きが良くて女には百戦錬磨の、役者も黙るような色男の瓢六は、渋い男盛りの中年になって新しい出発をするんだね・・・。
瓢六が生涯の友とも思う生真面目な弥左衛門もいいキャラだし、風流を愛する与力菅野一之助もとても魅力的に描かれている。
彼は屋敷から一歩も出ないで命令をするだけなのだけど、人を食ったような飄々としたふるまいにさえ惹きつけられる。
終盤には勝麟太郎もおなじみのべらんめえ口調で登場して話を盛り上げるが、シリーズものとしてはやはり結末がスッキリとはしなかった。
ハッピーではないしアンハッピーでもないから・・・。
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Author:chiruko
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