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諸田玲子「炎天の雪」

感動の長編だった。
諸田玲子はこんな本も書くのだと思った。
「天女湯おれん」のような軽いタッチの本もあれば、上下巻で900ページに及ぶこの「炎天の雪」は、胸が詰まるような哀しいストーリーだった。
一つ前に読んだ彼女の「奸婦にあらず」も、井伊直弼と村山たかの長きに渡る情愛を描いて面白かった.。
たしか井伊直弼といえば原作は違ったが、NHKの大河ドラマの第1回目の主人公ではなかったか・・・?
どうしてこんな古いことを覚えているのか不思議なんだけど、直弼役はたしか尾上松緑、たかが淡島千景、そして長野主膳に佐田啓二・・・といえば、もう皆故人・・・ドラマは大老になってからの時代と思うけれど、何十年も昔のことなので彼らも若かった時期だったのかもしれない。
この本では十代の直弼から描かれて興味深かった。

さてこの「炎天の雪」はそれをもしのぐ面白さで、1か月かけて上下巻を読み切った。
加賀前田藩で藩主の信頼を受ける実力者の大槻伝蔵が、無実の罪で政敵により葬られる。
彼は死罪となる前に自殺してしまうのだが、連座の罪という名目で彼の縁故の者らが全て捉えられ、幼い息子・甥らが死を待つのみの牢獄につながれた。
連座の罪というこの恐ろしい罰がどんなにむごいものなのかが全編を通じて描かれている。
かつて大槻に多大な恩義を受け彼の人柄にほれ込んでいた佐七は、大槻の妻子らを何とか助けようと奔走するのだが、その矢先白銀屋与左衛門・多美夫婦と運命のめぐり逢いをしてしまう。
まさに逢ってしまった・・・・だった。
彼らが逢わなければこんな悲劇は起こるはずがなかった。
だが傷だらけで飛び込んできた佐七を、人の好い夫婦は捨てておけなかったのだ。

白銀細工の腕利きの職人で、人が振り返るほどのいい男だった与左衛門は、武家の娘多美と駆け落ちして一人息子の当吉を儲ける。
貧乏だが家族三人仲良く暮らしていたのに、人違いで飛び込んで来た佐七によって、与左衛門の運命は坂を転がるように落ちてゆく・・・。
人当たりがよく誰にも好かれた与左衛門が、自分とは何の関係もない敵討ちにのめり込み、果ては盗賊稼業にまで引き込まれていくのを、多美はどうすることもできずいつか心も離れていってしまう。
武家娘であった多美を幸せにできなかったという後悔、自分の出自からくる誰にも言えない劣等感、与左衛門もまたわかっていながら引き返せない道に踏み込んだのだ。
味方に裏切れて捉えられた彼の罪にも連座が適用され、多美も当吉も囚われの身となってしまう。
佐七は大槻の妻子をやっと救い出したものの、今度は多美と当吉を救うためにまたまた命をかけることになるのだ。
二人を救うために何が出来るのか、いやまず何か出来ることからしよう・・・と、佐七は暗闇から一筋の光を見いだしたように立ち上がり、一心に助命嘆願書を集めそれが当吉の命を救うきっかけとなる。

辛いことばかりの人生も人を信じていれば救われることもある・・・。
囚われから解き放され、7年以上の月日を橋番をしながら佐七と暮らしていた多美は、ある日ついに死んだと思っていた当吉と思しき人物を、橋の彼方に見いだすのだ・・・。
お互いに駆け出した二人を想像しながら涙があふれそうになった。

短期間の間に呪われたように藩主の死が続き、その名前や母親たちの名前が覚えきれず書き出すはめに・・・。
この加賀藩のお家騒動から始まった恐ろしい連座の罪というのは、どこまでが事実なんだろうか?
ドラマ化が待たれる・・・。
まだ何回か読み返したいと思いながら、後ろ髪を引かれる思いで今日、図書館に本を返してきた。
今年は20冊の小説を読み、今まで知らなかった作家に出会い実り多い年になった。
また来年の読書が楽しみ~・・・。
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